Speaker A
そんな毒を客に出すきか。私は嫁が 差し出した白い皿の前に手のひを突き出し ました。皿の上には丸ご上げた赤と白の島 の魚が卓では観光客の夫婦が待っています 。日本から来た息子の嫁みほ皿を下ろし ませんでした。その魚は今朝私自身が網 から外して捨てたものでした。台所の入口 に港の置場にあるはずの青いバケツが置い てあったのです。突き出した右手で曲がっ た人差し指が震えていました。私はこの魚 を海にいるどんな生き物よりも憎んでい ました。話はその3週間前の朝に遡ります 。 4月の夜明けキプロストの南の海はまだ 暗い青でした。前の晩に立てておいた網を 私は1人で巻き上げていました。重い。網 が重いのは本来なら喜ぶことですけれど水 の中から上がってきたのは赤と白の島でし た。長いトを広げた魚が網の目という目に 絡みついています。1匹、また1匹数える のをやめるほどでした。この朝だけで 何十kmあったか分かりません。売り物に なる魚はその間にほんの数匹挟まっている だけでした。私は厚手の手袋をはめて島の 魚を1匹ずつ網から外していきました。ト が網の糸に引っかかり1匹外すたびに手が 止まります。手袋の指先はもうあなたらけ でした。外した魚は青いバケツへ港に戻っ たら置場に捨てる。毎朝その繰り返しでし た。港に船をつけると魚屋のデスポが店の 台の前で腕を組んでいました。台の上は ガランとしています。ヤニス今朝はそれ だけかい?私が置いたわずかな魚を見て デスポはため息をつきました。その隣には 海沿いのホテルの料理長ステリオスが立っ ていました。10年近く毎週私の魚を買っ てくれていた男です。ステリオスは申し訳 なさそうに首を振りました。数が揃わない なら来週からはよそから仕入れるよ。それ だけ言って彼は車に戻って行きました。











