遠くをもっと身近にする超望遠レンズのデザイン — Transcript

キャノンの超望遠レンズRF200-800mmのデザインと技術革新を詳しく解説。軽量化や手ブレ補正機能に注目。

Key Takeaways

  • 超望遠レンズは焦点距離が長く大きく重く高価だが、技術革新で小型軽量化が進んでいる。
  • RF200-800mmは世界初の800mm超望遠ズームでありながら軽量で操作性に優れている。
  • 手ブレ補正(IS)と超音波モーター(USM)の搭載で高精度な撮影が可能。
  • 細部にわたるデザインの工夫がユーザーの使いやすさと製品の高級感を両立している。
  • 製品企画から設計までの総合的な努力がグッドデザイン賞受賞に繋がった。

Summary

  • キャノンデザインセンターの太田氏と竹内氏が超望遠レンズのデザインについて解説。
  • 焦点距離によるレンズの分類と超望遠レンズの特徴を紹介。
  • 1200mm超望遠レンズの歴史的な大きさ・重さ・価格の変遷を説明。
  • RF200-800mm F6.3-9 IS USMの世界初の超望遠ズームレンズとしての特徴を紹介。
  • レンズの基本造形はシンプルな円筒形で、内部構造を考慮したパーツ配置で精緻感を追求。
  • Image Stabilizer(手ブレ補正)とUltrasonic Motor(超音波モーター)の技術詳細と効果を解説。
  • ズームリングや調整リングなど操作系リングの形状と機能の工夫を紹介。
  • 三脚座リングの位置変更などユーザー視点の細かな改良事例を説明。
  • 白塗装とレザーパターンによる耐久性と高級感の両立。
  • EOS Rシステムの一体感を生むマウントコアデザインとグッドデザイン賞受賞の背景。

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00:10
Speaker A
皆さんこんにちは。キャノンデザインセンターの太田です。
00:15
Speaker B
こんにちは、竹内です。
00:18
Speaker A
え、これからのプレゼンテーションでは普段なかなか聞くことのないレンズのデザインについてお話します。
00:26
Speaker A
え、本題に入る前に最初に少しだけ私たちの仕事の紹介をさせてください。
00:33
Speaker A
え、私たちはキャノンのカメラやレンズなど製品の外観のデザインをしています。
00:40
Speaker A
え、このような商品です。
00:45
Speaker A
え、製品デザインの仕事はプロカメラマンのヒアリングやユーザーの調査を行ったり、時には自分たちも製品を使ったりして試験を深めることから始まります。
00:59
Speaker A
そしていくつもの試作を作り試行錯誤を繰り返して形の美しさはもちろん使いやすさや持ちやすさなどを日々考えてデザインを行っています。
01:51
Speaker A
え、それでは本題に入ります。まずアジェンダです。最初に基礎的なレンズ全般の話を私の方で行います。
02:00
Speaker A
続いて担当デザイナーより最新レンズを題材にしてデザインの特徴や工夫をお話していきます。
02:09
Speaker A
その後に質疑応答を行いますので最後までお付き合いいただけると嬉しく思います。
02:16
Speaker A
それでは早速始めましょう。1、超望遠レンズ全般のお話です。
02:24
Speaker A
え、キャノンのカメラ用交換レンズはたくさんの種類があり、色々な形や大きさがあります。
02:32
Speaker A
非常に非常に基礎的なお話ですがそれらのレンズは焦点距離という基準で分類されます。
03:22
Speaker A
え、焦点距離が50mmのレンズを標準レンズと呼びそれよりも小さい値、例えば10から20mm程度を広角レンズと呼びます。
03:36
Speaker A
標準よりも大きな値、まあおよそ70mm以上のレンズを望遠レンズと呼び分類しています。ちなみに標準である50mmは人の視角に近いとされている焦点距離になります。
03:55
Speaker A
え、さらに400mmを超える望遠レンズを超望遠レンズとして分類します。遠くの被写体をぐっと引き寄せることができる超望遠レンズは撮影の醍醐味が味わえる憧れのレンズとなっています。
04:14
Speaker A
え、レンズの名称の中にはいくつかの数値が記載されています。
04:20
Speaker A
この数値はそれぞれ焦点距離とF値と言います。
05:07
Speaker A
え、焦点距離は数値が大きくなるほど価値があり遠くの被写体を大きく写すことができます。
05:17
Speaker A
一方でF値は逆に数値が小さくなるほど価値があり背景がボケた写真を撮ることができます。
05:29
Speaker A
ですのでそれぞれの数値、焦点距離が大きくなればなるほどF値が小さくなればなるほど一般的にレンズは大きく重く高価になると言われています。
05:49
Speaker A
さて、それでは焦点距離の数値はどれぐらい大きなものがあるでしょうか?
05:56
Speaker A
え、200mm、400mmと続いてえ、その次には600mm、800mmと続きます。
06:45
Speaker A
現在最も焦点距離が長いレンズは1200mmとなっています。この焦点距離は野球場のバックスクリーンからバッターの姿を画面いっぱいに捉えられる焦点距離となっており実用的な最長焦点距離のレンズとして古くから作り続けられています。
07:07
Speaker A
ちなみにえ、スバル望遠鏡の焦点距離を調べてみました。16400mmと書いてありました。やはりえ、望遠鏡はすごいなと思いました。
07:20
Speaker A
え、そのような超望遠レンズですが非常に大きなガラスのレンズを磨くために熟練工の高度な技術が必要となります。
07:30
Speaker A
また、とても遠くを捉えられる特殊なレンズなのでプロカメラマンが使用するケースが多く高い耐久性も求められます。そのため超望遠レンズは大きく重く高価になってしまいます。
08:27
Speaker A
例えば1993年に発売された1200mmのレンズは本体の長さが80cm以上あり重さはなんと16kg以上もありました。とても手で持って撮影できる重さではないです。さらに価格は980万円もしました。当時の価格なので非常に高価で一般のユーザーが使えるものではありません。
08:59
Speaker A
そこから30年の時を経て2022年に発売された1200mmは技術の進化によって本体の長さは30cm以上も短くなり重量も3.3kg程度になりました。手持ちでの撮影が可能になっています。また価格も大幅に下がりました。しかしやはり高価です。
10:08
Speaker A
写真撮影の醍醐味が味わえる超望遠撮影をもっと身近なものにしたい。そのような思いを持って私たちは日々挑戦を続けています。そして技術の進化や新しいカメラシステムの活用によって超望遠レンズが大きく変わりつつあります。
10:28
Speaker A
キャノンは超望遠レンズでこれまでいろいろな世界初の挑戦をしてきました。そして最新の世界初それがRF200-800mm F6.3-9 IS USMです。
10:47
Speaker A
このレンズは望遠端が800mmもあるズームレンズです。800mmという超望遠でありながら今までにないほど小型で軽量です。そして比較的リーズナブルなので多くの方が少し気軽に使えるレンズなのではないかと思います。このように今までなかなか手が届かない遠い存在であった超望遠レンズは身近なレンズになりつつあります。
11:56
Speaker A
さて、レンズ全般の話はこれくらいにしてえ、続いては超望遠レンズを題材にレンズのデザインのお話に移りましょう。
12:07
Speaker B
えー、それでは2つ目のRF200-800mm F6.3-9 IS USMのデザインについて私の方からお話します。よろしくお願いします。
12:20
Speaker B
RF200-800mmは世界初の望遠端が800mmの超望遠ズームレンズとして小型軽量化が大きな特徴のレンズです。
12:31
Speaker B
このレンズの基本造形は極限まで無駄を削いだシンプルな円筒形がモチーフです。
13:18
Speaker B
実際には様々なリング形状が構成要素として存在します。それらを内部構造を踏まえながらパーツの幅や間隔、サイズを見極めバランスよく配置することで精密機器としての精緻感と先進感のあるデザインを追求しました。
13:39
Speaker B
RF200-800mmは一見無駄のないシンプルなデザインに見えますがよく見てみると様々な秘密や工夫が隠れています。それでは見ていきましょう。
13:55
Speaker B
まず最初にレンズの先端部分です。ここには製品名称が印刷されています。
14:05
Speaker B
先ほどF値の話がありましたがこのIS USMにも意味があります。
14:13
Speaker B
ISはImage Stabilizerの略で手ブレによる映像の乱れを軽減させる仕組みが入っていることを意味します。
14:20
Speaker B
続いてUSM。
14:22
Speaker B
USMはUltrasonic Motor、超音波モーターのことでこのモーターによって静かに素早くピントを合わせることが可能になります。
15:16
Speaker B
Image Stabilizerについて少し詳しく説明します。
15:21
Speaker B
キャノンでは1980年代から撮影時に問題となる手ブレを補正する仕組みの研究を始め、そして1995年に光学シフト方式の防振機構を搭載したレンズを発売し、その後研究を重ね今ではレンズだけでなくカメラにも手ブレ補正機構が搭載されるようになりこの2つを合わせることで強力な手ブレを抑えることができるようになっています。CIPA規格というカメラ業界の規格があるのですがRF200-800mmは手ブレ補正の性能がCIPA規格の5.5段となっています。
16:39
Speaker B
具体的にImage Stabilizerを使用するとどのようになるか見てみましょう。
16:44
Speaker B
まずIS手ブレ補正を使用していない写真です。皆さん何の写真だか分かりますか?何が何だか分からない写真だと思います。
16:55
Speaker B
次にISを使用した写真です。
16:59
Speaker B
実は夜の海に浮かぶタンカーを撮影したものです。このようにISを使うと夜景などスローシャッターでも手持ち撮影が可能で先ほどの写真がぴたりと止まった綺麗な写真になります。
17:14
Speaker B
続いてUSMです。キャノンがレンズに使用している超音波モーターは3種類あります。
17:20
Speaker B
まずリングUSM。リングUSMは最初に開発したモーターで、筒状のカム機構を連結し回転運動を直線運動に変える仕組みで大口径レンズや超望遠レンズに適したモーターです。マイクロUSM。
17:38
Speaker B
マイクロUSMはレンズのコンパクト化を可能にするモーターになります。ナノUSM。高速かつ高い精度のピント合わせが可能で動画撮影時にも良いパフォーマンスを発揮します。これらのモーターを用途に合わせ最適なものを使用しRF200-800mmは制御性に優れた動画撮影時になめらかなピント追従を可能にするナノUSMを搭載しています。
18:46
Speaker B
RF200-800mmはこのISとUSMによって手持ちの撮影でも遠くの被写体に触れずに素早くピントを合わせることができ鮮明な写真を撮ることが可能となっています。
19:00
Speaker B
このレンズは先ほどの写真のように遠くの被写体を撮影する場合先端部分が繰り出されます。この部分には軽量化を行う上で重要な要素が含まれています。
19:14
Speaker B
こちらは繰り出される先端部分の内部構造です。第一群と呼ばれるレンズの間隔を離すことで2番目、3番目のレンズを小さくすることができ体積の大きなレンズを小型化したことで大幅な軽量化が実現されました。
20:13
Speaker B
次にズームリングです。
20:16
Speaker B
全体に占める割合が大きいと思います。200mmから800mmのズーム操作を確実に行うために必要な大きさで構えた時に自然に指がかかる位置に配置され見た目も白い鏡筒に対し絶妙なバランスに収まっています。
20:35
Speaker B
続いてズームリングの下にある調整リングです。調整リングがズームリングのトルクが調整できこのリングによって好みの力加減でズーム操作を行うことが可能になります。
20:48
Speaker B
RF200-800mmには3種類の操作系リングがついていてそれぞれが異なる断面形状をしています。
20:57
Speaker B
上からズームリング。ズームリングは大きな回転動作に適した荒いローレット形状。次に調整リング。調整リングはトルクがしっかり調整できるようにエッジの効いたシンプルな溝形状になっています。最後にフォーカスコントロールリングには繊細な操作が可能なアメローレットとなっておりそれぞれの役割に適した形状を取り入れ確実な操作が行えるようになっています。
22:07
Speaker B
次に操作部です。スライドスイッチと丸いボタンが2個ずつついています。このスライドスイッチにも秘密があります。拡大して確認していきましょう。
22:20
Speaker B
スライドスイッチの拡大図です。山型の突起が3個ずつついています。
22:26
Speaker B
よく見ると外側に向かって山が高くなっています。少し前の製品では山の高さが同じでしたがこのような形にすることで指にフィットし操作性が向上しました。細かな部分にまで目を向け少しでも魅力的な製品になるよう日々製品開発に取り組んでいます。
23:26
Speaker B
またレンズファンクションボタン、フォーカス、コントロールリングには使いたい機能を割り当てることが可能でユーザーに合わせたカスタム機能も充実しています。
23:42
Speaker B
本体後方にある三脚座リングはデザイン性と耐久性を満たした肉抜き形状を取り入れながら軽量化を行いました。またストラップの釣り感も一体化することで軽量化し見た目もシンプルな外観に仕上げています。
23:59
Speaker B
三脚座についてもう1点。左の図の三脚座リングのロックノブは上側についています。
24:07
Speaker B
開発当初はこの位置に配置していました。専用のソフトケースができたタイミングで簡易モデルを入れ肩にかけた際ロックノブの出っ張りが腰のあたりに触れ違和感を与えることが分かりました。この結果を元に検討を重ね最終的には体に触れることのない右の図の位置を導き出しました。このように製品になるまでトライアンドエラーを繰り返し様々な改善を行っています。
25:16
Speaker B
続いて本体の色です。このレンズは主に屋外で使用されるため太陽の熱による温度の上昇を抑える白塗装に加えレザーパターンを施しています。
25:30
Speaker B
レザーパターンは1層目にベースの白い塗装を行い2層目に革柄に見える塗装を重ねることで耐久性が上がり過酷な使用に耐える性能と高級感を合わせ持つ外観に仕上がっています。
25:46
Speaker B
最後にレンズの後方部になります。ここにはマウントコアと呼ばれる金属製のリングがついています。
25:53
Speaker B
これはカメラ側にもついていてレンズをカメラに付けることで一体感が生まれEOS Rシステムとしてのデザインが完成することになります。このリングはEOS Rシリーズ全てのカメラとレンズについていてマウントコアデザインと呼ばれレンズ交換式カメラシステムの象徴となっています。
26:54
Speaker B
以上ここまでになります。RF200-800mmはシンプルに見えて多くの要素で成り立っていることがお分かりいただけたでしょうか。このように目立たない中にもレンズの先端から後端まで様々な工夫を取り入れユーザーの期待に応えられ使用する喜びや驚きを提供できるようにデザインに取り組んでいます。
27:16
Speaker B
そしてこれらの取り組みが実を結びカメラや他の製品と同様に本年度のグッドデザイン賞ベスト100を受賞することができました。これは決してデザインだけで取れる賞ではなく製品企画などこの製品に関わる全ての人々の努力と良い製品を作りたいという願いが結果に繋がったと思います。
27:36
Speaker B
以上になります。ありがとうございました。
Topics:キャノン超望遠レンズRF200-800mmレンズデザイン手ブレ補正超音波モーターズームレンズカメラアクセサリーグッドデザイン賞EOS Rシステム

Frequently Asked Questions

超望遠レンズとは何ですか?

焦点距離が400mmを超える望遠レンズを超望遠レンズと呼び、遠くの被写体を大きく写せるレンズです。

RF200-800mmレンズの特徴は何ですか?

世界初の望遠端800mmの超望遠ズームレンズで、小型軽量化されており手ブレ補正と超音波モーターを搭載しています。

手ブレ補正(IS)機能はどのように効果を発揮しますか?

ISは撮影時の手ブレを光学的に補正し、スローシャッターでも手持ち撮影を可能にし、鮮明な写真を撮影できます。

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